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アンチモンの環境・健康・安全規制への取り組み

1.「アンチモン環境安全対策協議会」の設立

1998年11月に日本鉱業協会アンチモン部会の下部組織として「アンチモン環境安全対策協議会」が設立されました。

2.「国際酸化アンチモン協会」の設立

2000年10月に日米欧の酸化アンチモン生産者によって「国際酸化アンチモン協会」が設立されました。

3.欧州リスクアセスメント第4次優先リスト指定への対応

2000年10月25日欧州既存化学物質規則93/793/EECにおいて、三酸化アンチモンは欧州リスクアセスメント第4次優先物質に指定され、現在も審議中です。

4.アンチモンの水質基準見直しへの対応

アンチモンの経口慢性毒性等に基づく水質基準化の可能性が検討されています。

5.三酸化アンチモンの吸入発癌可能性への対応

三酸化アンチモンは、過去より肺への吸入発癌可能性が懸念されており、現在、欧州リスクアセスメントあるいは米国環境保護庁において、各々審議評価中あるいは試験計画中です。

1.「アンチモン環境安全対策協議会」の設立

 アンチモンのヒト健康及び環境安全性に対する意識の高まりを受けて、アンチモン製品に関する科学情報の収集、調査、研究及びそれらの普及・啓蒙に付随する活動を通じて、アンチモン生産者の健全なる発展を図ることを目的に、1998年11月に日本鉱業協会アンチモン部会の下部組織としアンチモン環境安全対策協議会を設立しました。
 また、同協議会は「国際酸化アンチモン協会」の日本側事務局としても活動しています。
2. 「国際酸化アンチモン協会」(IAOIA:International Antimony Oxide Industry Association)の設立
(1) 1997年に日米の難燃剤協会を介して日米アンチモン業界団体によるヒト健康・環境安全性に関する情報交換会をスタートさせ、その後、日米欧及び中国代表の参加を得て国際協会の設立準備会議・意見交換会を実施しました。その後、2000年10月には、日米欧地域代表による 運営委員会を開催して「国際酸化アンチモン協会」(IAOIA:International Antimony Oxide Industry Association)が正式に発足致しました。
(2) 非営利団体である「国際酸化アンチモン協会」の目的は、三酸化アンチモンの環境、健康並びに安全規制に関する世界の三酸化アンチモン生産者の共通の利益に貢献することにあります。この目的のために三酸化アンチモンの安全性と有益性に関する研究を実施すると共に、情報を発信し、また適切な科学的知見を各国政府機関や国際機関に提供しています。
(3) 2004年6月には、三酸化アンチモンの欧州リスクアセスメントへの組織的対応強化のために、顧客業界団体である欧州プラスチック工業会(Plastics Europe:旧APME)及びその主要グループであるPET業界他と共同プログラムを開始することに合意し、三酸化アンチモン利害関係者団体(ATOS:Antimony Trioxide Stakeholder)を組織して活動しています。
(4) 2005年には、国際酸化アンチモン協会に中国も正式加盟して、日米欧及び中国の世界4極体制で三酸化アンチモンのヒト健康・環境安全性課題に取り組んでいます。
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3.欧州リスクアセスメント第4次優先リスト指定への対応

(1) 欧州既存化学物質規則93/793/EECにおいて、三酸化アンチモンは2000年10月25日に欧州リスクアセスメント第4次優先物質に指定され、 現在、規則に従って様々な環境影響側面の評価が進んでいます。
(2) 国際酸化アンチモン協会としては、三酸化アンチモンの全ての用途における安全な使用を証明するためには、科学定量的かつ完全なリスクアセスメントが有効であることから、欧州リスクアセスメント対応を最優先課題として、この活動に積極的に協力しています。
(3) 国際酸化アンチモン協会は、三酸化アンチモンの担当局であるスウェーデンの化学物質監督局 (KemI)と定期的に協議を重ねており、各種毒性影響試験等のデータギャップについて、そ れを解決すべく各種試験結果のデータ提供を行っています。
(4) 2004年国際酸化アンチモン協会は欧州顧客業界団体とATOSを組織して、環境安全性に関 する共同プログラムを実施することに合意しました。
その活動は、公平な第三者機関による科学研究の助成、 欧州委員会欧州化学局(ECB)他の技術関係会議における国際酸化アンチモン協会の科学的主張の理論構築の支援等です。 そして、三酸化アンチモンの生産と使用に関する適切なデータを取得して、欧州規制担当局(ECB)に 三酸化アンチモンの社会経済産業における重要性を認識してもらうようにしています。
(5) 2004年7月に担当局KemIは、非公開ながら第一次報告書案を提案し、それを受けて欧州 化学局の技術委員会(TC NES)においてヒト健康及び環境影響について、現在も技術評価の 審議中です。
(6) 2006年4月末にイタリア アロナで開催された「化学物質分類及びラベリング専門家委員会」 では、欧州リスクアセスメント下の「危険な調剤の分類、包装、表示に関する指令」 88/379/EECにおいて、三酸化アンチモンは”水生生物への環境有害性なし” 及び ”環境警告ラベル必要なし”との結論に至りました。この結果、欧州リスクアセスメントの 最終結論でも三酸化アンチモンは、”水生生物への有害影響なし”になる見込みです。
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4.アンチモンの水質基準見直しへの対応

(1) 1993年に世界保健機構(WHO)で初めてアンチモンの飲料水ガイドラインが暫定値として 設定されました。その根拠は1970年にSchroederら毒性学者グループが発表のラットを用いた5ppm、1水準の生涯投与動物実験を基にしたもので、米国環境保護庁(EPA)及び日本の水質 基準も世界保健機構と同一のものです。
この動物実験の方法は経済協力開発機構(OECD)の標準ガイドラインに基づく試験方法では なく、かつその毒性影響に関する実験結果は致命的なものではなく、ラットの寿命が若干短くな ったことと、代謝関係が若干乱れたという軽微なものです。
(Schroeder et. al., J.Nutr.,100.59-68,1970) 
(2) 米国酸化アンチモン工業会は、米国環境保護庁に対して下記の観点で異議を申し立てました。
イ) 1993年WHO飲料水ガイドラインの算定根拠となったSchroederらの生涯投与動物実験のサンプルには酒石酸アンチモニルカリウム(APT)が使用されており、三酸化アンチモンとは溶解度及び急性毒性が大きく異なり、毒性が強いサンプルである。
ロ) 規制対象の試験物質としては、排水等の中に存在している可能性の高い化学形態の代表的なも のにすべきである。即ち、酒石酸アンチモニルカリウムによるものではなく工業的に最も使用 されている三酸化アンチモンとすべきである。
ハ) 環境中の水質基準・許容限界は、回収され得る全アンチモン濃度ではなく、溶解アンチモン濃 度に基づくべきであり、許容限界が溶解部分に基づかない場合には溶解度が小さい三酸化アンチモンに対する別個の基準を設定するか、あるいは 溶解性の化学種である酒石酸アンチモニルカリウムに限定すべきである。
(3) 近年、欧州プラスチック工業会(Plastics Europe)スポンサーによるラットを用いた三酸化アンチモンサンプルを 動物飼料に混ぜた90日間経口投与実験では20,000ppmでも毒性影響なしという結果が出 ており、WHO飲料水ガイドライン見直し評価にも採用されています。
(Hext et al.,J.Appl.Toxicol.,19,205-209,1999)
(4) アンチモン環境安全対策協議会として九州大学大学院医学研究院に研究助成を実施し、三酸化 アンチモンと酒石酸アンチモニルカリウムの動物毒性影響を調査しています。更なる代謝研究 解析が必要としながらも下記の結果が上げられています。
イ) ラットとマウスの経口投与実験では、そのアンチモン臓器濃度と臓器分布パターンが大きく異 なっています。又、ラットではアンチモンは赤血球との親和力(結合力)が強く、高濃度に存在 していると考えられています。
(2000年4月 第70回日本衛生学会総会講演集)
ロ) ラットにおいて三酸化アンチモンと酒石酸アンチモニルカリウム、両化合物のアンチモン臓器 分布は例外的に肝臓が低濃度であることを除けば血流量が多い臓器に高濃度で分布しています。
一方、マウスでは全血濃度は低く、ラットに比べてアンチモンは低濃度です。
即ち、三酸化アンチモンの適正な毒性評価を行うには、最近の動物実験影響評価の傾向でもあ る動物種を数多く変えての毒性評価をする必要があると指摘されています。
ハ) 三酸化アンチモンと酒石酸アンチモニルカリウム、両化合物の同濃度投与では、全般的に三酸 化アンチモンの臓器濃度の方が低くなっています。
また、アンチモン量にして、体重1kg当り10mgのみならず、1000mgという酒石酸アンチ モニルカリウムの半数致死量をはるかに越える量を4週間反復投与しても、三酸化アンチモン の明らかな毒性影響が認められません。その為、アンチモンの毒性評価では各アンチモン化合 物毎の溶解性を無視すべきではなく、区別すべきであると結論されています。
(2001年 第12回日本微量元素学会総会号)
ニ) 2002年以降、ラットとマウスを用いた三酸化アンチモンの飽和溶解度での亜慢性毒性及び 経世代影響評価を実施しています。
その途中経過として、三酸化アンチモン群に関してラット及びマウス共に親の妊娠、出産、子の 授乳期、生育期の成長等に何ら毒性影響は観察されていません。一方、酒石酸アンチモニル カリウム群において親マウスの妊娠、出産への影響、並びに子マウスの授乳期、生育期に成長 の抑制効果が観察されています。
(2003年3月 第37回日本水環境学会年回講演集)
(2006年3月 第76回日本衛生学会総会講演集)
(5) 2003年WHO飲料水ガイドライン第3版で10年ぶりの大幅見直しがあり、アンチモンもそ の見直し対象にリストアップされて科学的な文献検証に基づき、新基準は1993年暫定基準の 本来値0.003mg/lの6-7倍に当たる0.02mg/lに大幅緩和改訂されています。
更に、この数値は安全係数を500から1,000に2倍に上げての基準提案であり、非常に 安全サイドに立ったものとの記述もあります。
アンチモン環境安全対策協議会としては、世界保健機構の飲料水ガイドラインは依然として水 溶性で急性毒性が強い酒石酸アンチモニルカリウム(APT)試験結果を引き継いでおり、かな りの問題点を抱えているとして、その毒性影響は低く、さらに緩和されるべきであるとの見解に 立っています。
(6) 日本の水質基準はWHO飲料水基準の見直しと並行して改訂されています。アンチモンについて の飲料水水道基準並びに環境基準の法基準設定はなく、各々候補物質として、2003年5月30日に水質管理目標設定項目の目標評価値として0.015mg/l(従前の監視項目指針値0.002mg/lの7.5倍値)、並びに2004年4月2日に要監視項目指針値設定として0.02mg/l(1993年指針値対比の10倍値)と同様に大幅緩和改訂されています。
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5.三酸化アンチモンの吸入発癌可能性への対応

(1) 世界がん研究機関(IARC)発癌性ランク「グループ2B」は、「ヒトに対して発癌性がある かも知れない」ということで、発癌性を意味するものではなく、更なる研究が必要であることを 示すものです。
その根拠は、1980年代のWatt及びGrothの実験結果に基づいていますが、これらの 1980年代の実験結果は、その後の解析によって試験条件でのダスト過剰、あるいはGrothの 吸入実験論文では三酸化アンチモンの実験サンプルの純度が80%と低く、さらにヒ素等の不純 物濃度が高く、それらの影響もあって疑問視されています。
(Watt. Ph D Thesis ,Wayne State University,Detroit,MI,1983)
(Groth et. Al., J.Toxicol.Environ.Health 18,607-626,1986)
(2) 米国環境保護庁(EPA)は、これらの研究は試験条件等に問題有りとして、アンチモンの発癌 可能性を決定するには使用できないと結論しています。
(米官報48F.R.717,1983)
(3) アンチモン環境安全対策協議会としては、下記のEPAの結論・見解を採用すべきであると主張 しています。
イ) 米国酸化アンチモン工業会がスポンサーとして、EPAと試験方法を協議して実施した吸入試 験結果では発癌性は認められない。
[FUNDAMENTAL AND APPLIED TOXICOLOGY 22,561-576(1994)]
ロ) EPAは三酸化アンチモンの吸入発癌性疑義を変更していないが、緊急的措置は不要と判断し、 優先試験(ITC)リストからアンチモンをドロップしている。 即ち、EPAの三酸化アンチモンの発癌性最終ランク付けは未完であり、EPAの発癌性リ ストには記載されていない。
(米官報56F.R.67424,1991)
ハ) 1993年のWHO飲料水基準の根拠になった1970年Schroederらの生涯投与動物実験に おいては経口発癌性は認められておらず、EPAはアンチモン化合物の経口発癌性ランクを 「D:ヒト及び動物実験に関する証拠が不十分であるため、ヒトへの発癌性を判断出来ない物 質」と位置づけしています。
(米官報57F.R.31776,1992)
(4) 現在、EPAは国家毒性プログラム(NTP)において、一連の慢性毒性・吸入発癌性を検証す る試験計画があり、2006年9月にはそのプロトコルが明らかになる予定となっています。
(5) 現在、欧州リスクアセスメントにおいて三酸化アンチモンの科学定量的な評価が進められており ますが、当社は、国際酸化アンチモン協会の活動を通じて、更なる活動を展開することにしてい ます。
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